ミリオンゴッド / または異母兄弟との邂逅

道路
 

夕刻、幹線通り沿い。パチ400、スロ150くらいの中規模店。

仕事終わりのこのころにわっと人が増えて来る店なのだが、平日ならばそれもボチボチといった客付。
自動ドアを抜け、スロコーナに入ると、ミリオンゴット850の台が。

これは香ばしい。

ミネラルウォターを、とんと下皿に投入すると横の空き台を眺める。
うぉ、そちらは960。

迷うことなくペットボトルを、横ずらし。
しかし960と850の並びなんて、なかなかない光景だよなぁ。

そうしてすぐに打ち始めたわけだが、ミリオンゴットの島は不人気で人が少ない。

後ろを通る客もおらぬまま、2千円ばかりを消化する。


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960のミリオンを消化したあと、この850も打てたりして。
そんな淡い、甘い考えが、かすめると同時に人影が。

ややだぼついたTシャツに、あみだ被りの幾らかDJスタイルの若いニーヤン。

隣に座るや否や、足元にリュックを置く。
だわな、だわな。

ゴットシリーズは当てるまでも、当ててからも長い勝負になるから、静打、静顔の人であって欲しいと切に願う。

と、隣人の気配に、意識を走らせていると、コインを借り、投入し始めたニーヤン。

レバーオン、そしてワン、ツー、スリーのボタン押し。
文句なし、合格である。

見た目こそ今時の、ややとっぽくもある若者だが、このスロットル遊戯のCOOLな振る舞い、確実に手練れのそれである。

完全確率抽選の、スロットルマシーンは、情緒も気合も祈念も怨念もまるで遊戯本質に介入はしない。

ただ静かに、叩くのみである。

20そこそこであろう、若者はそのスロットル真理を完全に体得しているのである。

確実に着実に、手練れである。

しかし、僕にはまだ懸念があった。

ゴットシリーズには、150ゲームとか200ゲームに1回くらいの頻度だろうか、ボタンプッシュの指示が出るのである。

すると、今まで静かだった善良なる隣人が、免罪符でも与えられたかのように、周りの迷惑、ヒンシュク顧みず、突如バチコ~ンと、ボタンを強打、もしくは狂打することがあるのだ。

それゆえ、彼のキリングミーソフトリーの遊戯も今しばらく、注視しなければならない。

ややあって彼の台、どうも斜め黄⑦が揃ったようで、それからしばらくのち、問題のボタンプッシュ演出が出現。

彼はというとボタンの上に添えるように静かに手を置き、その手で優しく優しくボタンを押し込んだ。

僕は口角が緩むのを禁じ得なかった。
素晴らしいよ。ほんと素晴らしい。

僕は年齢の上でも、このミリオンゴットのゲーム数の上でも、君の上を行く男だけれども、同じ天井遍路をたどる同志として、いや、僕はこの極めて振る舞いのいい青年に異母兄弟のような親しみさえ持ち始めていた。

彼はボタン演出後、10数ゲームといったところで、はやくも現モードおよび、種なしであることを鋭くCOOLに悟ったらしく、やおら席を立った。

戻ってきた異母兄弟は、台横のドリンクホルダーにファンタを差し入れた。

ファンタ

かわいらしいファンタオレンジ。おお、弟よ。

僕は久しくファンタを飲んでいないが、君はファンタなのだな。
のどを潤す弟。

弟の台、まだ1000ゲームちょいである。

天井上等! その一連の行動は、軽めのチャンスを逸し、長い長い旅路への覚悟のように僕には映った。

そうだ、一緒に天井に行けばいいではないか、弟よ、僕は思った。

閑散としたこの島で、心の手を携え、天井をトリガーに店長が青ざめるほど、2人で爆裂すればいいではないかと、僕は思った。

そして、両手にあふれんばかりの景品を交換所の受け入れ口に、置きいれる弟に、生き別れた年長の兄として何かしらの言葉を、後ろからかければいいじゃないか。

「出たね」
いいや、これじゃだめだ。

「駅前で酒でもどう?」
赤提灯

社交べたのぎこちない笑顔でもいいじゃないか、すくすくと健全に育ってくれた弟に、勇を振い、兄としてそう声を掛けてやろう。
彼も静かに、それを待っているはずなのだ。

カツ、トン、トン、トン。
カツ、トン、トン、トン。 1350を過ぎた。もう天井を意識するゲーム数だ。

少し後を行く弟は1100を超えたあたりだろうか。 残り100ちょいで天井到達がだいぶ現実的になってきたわけだが、この最終コーナーで一番気を付けなければいけないのは、焦りからくる押し順ミスである。

完全確率抽選のスロットル遊戯に、いかなる情動も潜り込ませてはいけない。

弟の手本となるように、道しるべとなるように、僕は3つのボタンを音もなく、押し込み続けた。

2人の兄弟愛を邪魔するものはもう何もないかのように思えた。
たぶん、天井へのきれいなワンツーフィニッシュを決めるはずだった・・・。

け・れ・ど・も、弟の様子が、変なのである。

はたと遊戯をやめると、少し弛緩したように、ドラムあたりをそぞろ眺め、やがて台上に手を伸ばす。

そうなのだ!

スナイパーより冷徹な弟は、ガイド表をつかんだのである。
お、おい!

普段、他人の台を全く覗き見ないワイであったが、思わず、目をむき、弟のデータカウンターに目をやる。
1200。

だよな、そりゃ、それくらいだよな。
打ち方はスナイパーだったが、ゴットのゲーム性を知らないなんて完全にトーシロである。

ミリオンゴットの島、常に客は1、2人といった感じ。
この島状況じゃ、空き台になってもしばらく、人が気づかない可能性もある。

となると、台の確保は隣人である、兄であるわたしが、一番優位だ。

1200で止めるのか、止めちまうのか。
こちらはもう天井だし、せめてあと200ゲームくらい回してくれ。頼むから止めないでくれ。

こうなるともう、違った意味の骨肉の争いである。
彼はややあってゲームを再開する。

そして幸か不幸か、ほどなくして当たると、単発で終了したのだった。
彼は単発で得た300枚のコインを半分ほど打ちこむと、残り150枚くらいを静かな所作で、ドル箱に詰め込んでいた。

1400ゲーム代で止めてくれと願った自分のせせこましさが少し恥ずかしかった。

離席するボーイ。

ドリンクホルダーには、彼の残したファンタオレンジ。

弟となったり、他人となったり。
パチンコ屋にも人知れず、それなりの人間ドラマが交錯するのである。

☆君☆押☆我☆嬉☆
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